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森田 泰暢
福岡大学 商学部 准教授
一般社団法人ヒマラボ 代表理事
伊藤 将人
株式会社エンベックスエデュケーション HRコンサルタント
一般社団法人エンプロイヤー・ブランディング協会 理事

何故、採用にUXデザインが必要か

福岡大学で、組織論の講義をおこなっている森田准教授をお迎えし、UXデザイン、サービスデザインについて伺いました。

伊藤: 森田先生、まずはUXデザインについてご説明いただいてよろしいですか。

森田: 今「モノからコトへ」という言い方を良くしますが、人はモノではなく出来事を買うんだという時代になっています。

出来事に価値を感じる=体験に価値を感じる
という時代の流れの中で、どう体験をつくるか、体験を作るために必要なことは何か、ということについて考えるのがUXデザインです。

UX(User Experience)は、ユーザーがものを利用したり、サービスを利用したりした時の主観的な体験そのものです。UXデザインは、モノの形や見た目のデザインではなく体験のデザインですので、時間軸を考えていきます。

例えば、ディズニーランドに行った時の体験は?と聞くと、皆さんディズニーランドの中でのことを考えますよね。
ミッキーのショーがすごく良かったとか、何時間も列に並んでアトラクションに乗ったとか。
ですがUXデザインでは、時間的な流れを考慮するので、まず

ディズニーランドに行く計画を立てる

ワクワクしてチケットを購入する

実際にディズニーランドに行って遊ぶ

お土産で買ったミッキーのぬいぐるみ見て、楽しかったことを思い出している

写真をみてまた行きたいと思っている

今度またいつ行こうかと考えている

ディズニーランドに行く計画を立てる

このように、ユーザーの体験を時間軸と一緒に分析することで、また来てもらう、何回も来てもらうための戦略を考えることができます。

タッチポイント

伊藤: そのUXの「体験」だけの調査から、「2018年卒 マイナビ学生就職モニター調査(4月)」で、説明会で学生が聞きたくないことNo.1は、経営理念 だと掲載されていますが、それを見た人事担当が、そうか経営理念は伝えなくていいんだ、という認識をもっている人がいます。
でも、それはちょっと違う気がするのですが・・・。

森田: そうですね、その経営理念を伝えないという考えに近い話はUXでよくでてきますが、あまりに短絡的な考え方だと思います。
ユーザーが嫌だと感じるから取り除く。傷口に絆創膏を貼るというか、そこがちょっとマイナスだったらやめてしまおうみたいな、マイナス部分をひたすらプラスに変えていくのがUXデザインというわけではありません。

ユーザーがサービスと触れるタイミングをタッチポイントと呼びます。採用活動においては説明会もひとつのタッチポイントです。そこで、一番大事な会社の経営理念が伝わらなければ、担当する部署に行ったときのタッチポイントで、担当部署の育成負担が増えたり、入社した学生の期待のズレが生じたりと、決して良い結果は生まれないと思います。

学生は、入社したい会社に関するWeb上の情報は集められます。本当のところはどうなの、そこで何ができるのかを知りたい。そういうポイントを伝えてあげることが重要ですね。

「コト」に必要な情報

森田: 今の学生ってどうなのという話になりますが、この情報過多の社会の中で就職活動している彼らが求めているものは、やはり多種多様です。
自分の道をちゃんと決めてドンドン活動を進めている学生もいますが、自分は何をやりたいのか、どうなるべきかに悩んでいる学生もたくさんいます。
自分の入った会社で、自分のスキルは伸ばせるのか、何かあってもやっていけそうか、誰かに聞ける環境があるのか、成長できるのか・・・

そこで、会社としてのしっかりした経営方針、事業計画、人員計画等をちゃんと説明できる、開示できる、ことが必要になってきます。社長の頭に入っているだけではダメなんです。
伊藤: 本当にそう思います。会社としてどう成長して行きたいかが明確になれば、欲しい人材がわかる。
どういう人材が欲しいのかを掘り下げて行くと、会社の問題にぶつかることもあるわけです。
ただスキルの高い人を求めて採用しても、自社にマッチした人材でなければ、お互いが疲弊していく。

サービスデザイン

森田: UXデザインから進んでサービスデザインというものがあります。タッチポイントでのユーザーの体験がよくなれば良い、というだけではなく、その提供する体験を自社の収益につなげ、社会への悪影響が出ない仕組みを作る。

先ほどのディズニーランドの話に例えると、来場者へのおもてなしを重視するあまりに採算が取れないことや働く人が疲弊することをやってはいけないですし、入場者数が多すぎて地域に迷惑をかけるようではいけない。自社で考えたサービスが、それぞれにどう影響が出るかを考えながら、関わる人たちが幸せになる三方よしの仕組みを作っていくという考え方です。

今は、会社に入れたから終わりではありません。
入社までの体験が良ければ良いわけではなく、採用活動のゴールは入社ではありません。
採用活動のみではなく、そこから人材の育成や事業での活躍まで連続的な体験として設計できる会社は「良い会社」ですね。

大学側も、巣立って行った学生がちゃんと社会の中で活躍できることを期待している。
入社できたから終わりでないのは、大学も一緒です。

伊藤: ありがとうございます。
まさに、私たちが目指しているところもそこです。
『UX × 採用 × 育成』
採用された人も 採用した人も、お互いがイキイキと活躍できる場をつくって行くのが、私たちの使命です。
IT業界を支える企業の発展に、採用と研修からかかわっていきたい。
是非、そこに先生のお力をお借りしたいと思っておりますので、宜しくお願いします。

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森田 泰暢
福岡大学 商学部 准教授
一般社団法人ヒマラボ 代表理事
関心領域はサービスデザイン(UXD,HCD含む)とそれに係る人材育成、産学連携やそれを通じた教育。
企業と連携した商品開発プロジェクトやリサーチ活動を中心に研究や教育に取り組む。
2017年から社会人と学生が混ざり合って研究的活動を楽しむ「ヒマラボ」という場を立ち上げた。
大人の好奇心や探究心の涵養し、誰もが知を生み、知を楽しむ社会を目指して活動している。
京都大学高等教育研究開発推進センター第5期MOSTフェロー(2017年3月修了)、人間中心設計専門家資格取得(2017年3月)。
農学修士、経済学博士。